映像用音楽制作の手順2008年01月06日 10時01分08秒


映像の音楽製作に於いて、どんな手順で作業を進めてきたか、生徒さんから質問を受ける事が多かったので、他所で書いた古い日記から編集して再録します。


まず、映像で紹介される作品そのもの、あるいは作品の図録や写真集を繰り返し見て、関連書籍も読みあさり、シナリオもナレーション原稿も暗記するくらい読み、すっかり「その気になった」状態に自分を追い込んでいきます。
一人で舞い上がるくらいまで(笑)読み続けると、頭の中で音楽が鳴らせるようになるので、後はそれを外へ出すつもりで制作にかかります。

頭の中の音色がはっきりしているうちに、先ず音色プログラミングから取りかかります。
つまり楽器自体を作る工程です。
旋律や和声は、楽器(音色)が最も美しく響きあう為の、舞踊で例えるなら振り付けや衣装のようなものであり、私にとってはあくまで音色そのもの( = 演技者の存在感)こそが重要でした。

メーカーが用意した出来合いの音色を使う事はまずありません。
必ず、自分でゼロからプログラミングします。
当然ですが、その頃出回り始めていたDTM音源の類いは絶対に使用しませんでしたし、たとえ強制されても使わなかったでしょう。


映像作品の内容によって曲数(ブロック数)は異なりますが、たいていメインテーマ~いくつかのブロック~エンドテーマという構成になるのが多く、それぞれの曲は映像の進行にぴったり合う様に、サイズを調整しながら仕上げます。
その後、MA作業(ナレーション録音~音楽やSEとのMIXと整音~マスター落とし)を経て、試写会でOKが出れば完成です。


これらは、ライブで再現する事など不可能で無意味です。
映像と一緒でこそ意味をなしており、また、音色やエフェクト処理、定位やミックスバランス、イコライジングなどまで含めて、もっと言うならナレーションまで含めて、初めて成立するものなので、譜面にして他の演奏者に渡し、解釈を委ねる事などできません。
ゆえに、この作業は「作曲」と呼ぶよりも「制作」と呼んで欲しいと思っていました。

職業を表す言葉は限られているので、仕方なく「作曲家」と(確定申告の書類も)していますが、自分の仕事について正確に説明したい時は「音楽制作・音声編集など、音声全般を扱う職人」としています。


「作曲」の勉強は必要です。
音楽理論を知らなければどうしようもありません。
しかし、シンセサイザー・プログラミングやDAWを扱う技術を「通常の作曲法で作られた楽曲を再生する手段」とだけ考えるのは間違っています。
「音色をただ選んで鳴らすだけ」という発想の貧困は、ここに原因があるのです。