SOUND Canvas VA2015年12月24日 17時55分46秒


http://icon.jp/archives/11437
http://www.dtmstation.com/archives/51966966.html

話題になりそうな新製品ですね。

以下、過去の日記の文章を再掲します。
所謂「DTM音源」に関しての私の捉え方です。


『2003年10月3日の日記より』
MU1000/2000と音源部は同じMU500の中古が安く手に入りました。
講師の仕事をする前には、いわゆるDTM音源の類いもGM、GS、XG等の規格も馬鹿にしていました。
『こんな事をするから、自分でシンセサイズした音色で独創的な音楽を作る人間が居なくなってしまう・・』
この考えは今でも持っていますが、一方で演奏データの互換性という事はやはり必要だと思うようになりました。
GMの拡張規格であるGM2、RolandのGS、YAMAHAのXG、それぞれ非常に細かいパラメータまで作り込む事が可能ですので、互換性=妥協 と考える必要はないでしょう。
私は無機質なテクノ風シンセサウンドは大嫌いなので、いつも有機的な音色変化のあるサウンドを作って、楽曲を構成していました。
何台ものシンセとエフェクト類を駆使して作ったそれらの音色を、一般的なDTM音源でも(ある程度)再現させられないだろうか、と考えた事から色々実験を始めたのが6年程前でした。
音色やエフェクトの設定までも含んだ演奏データを自由に配信出来るという事で、考えてみれば、これも(スケールダウンしてはいますが)「Hardwareによる制約からの解放」の一つです。
今思うと、始めは頭から馬鹿にしていた技術なのにだんだん興味を持つようになったのは、この点に惹かれたからなのでしょう。


『2004年1月30日の日記より』
所謂DTM音源という物が普及してから、自分で音色をプログラミングする人が減ってしまいましたが、コンピュータのCPUパワー向上に伴うソフトシンセの台頭で、また増えてきています。
それでも、お気に入りのDTM音源とMIDI Data だけによる音色パラメータ制御にこだわる人もいて、これはこれで良い事だと思うのですが、そういう人達から受ける質問で多いのは『曲が全て同じ質感になってしまう、何か方法は?』という事です。
DTM音源から出力された音のままを楽曲の完成としている限り、どこまで行っても同じ質感のままです。
音源のEffectを全て切った状態で各パートを個別に出力し、DAWで別々のAudioTrackに取り込み、あらためてMixを行えば随分違ったものになります。
互換性のあるDataとして楽曲を完成させるのではなく、単に作品としての完成を目指すならば、そしてMIDI Sequence だけでなく DAW としての機能を持っているならば、この手間を惜しんではいけません。


『2005年5月31日の日記より』
DTM音源だけを使って作られた音楽は、たとえ非常に緻密な演奏データであっても、音としては平面的で深みのない、いかにも「打ち込み」風になってしまいがちです。
こうした議論ではすぐに、音源が持つ楽器音サンプルの質の善し悪しが言われますが、それは殆ど問題ではなく、既存の楽器のシミュレーションを用いない、所謂テクノのようなスタイルであっても同じように感じられます。
原因は主に二つありますが、まず第一に、作業者の多くが演奏データには気を使っても、音色パラメータ(エフェクト設定、音質補正を含む)のプログラミングには注意を払わない、またはそういう意識がない、という事が言えます。
一台で多くのパートを賄え(マルチティンバーと言います)エフェクトブロックも内蔵したDTM音源が一般的になる前、シンセサイザーは一台につき一音色、エフェクト等も搭載されていないのが普通だったので、何台ものシンセサイザー、ミキサー、各種エフェクター、EQ、等が必要でした。
ですから、演奏データだけでなく、音そのものを作るのに多くの時間を費やします。
言ってみれば「自分の音楽を鳴らす楽器(の音)を自分で作り、それを磨きに磨いた」わけです。
そうした作業を経て緻密に組み立てられた楽曲に比べ、DTM音源の音色リストから音色を選んで鳴らし、せいぜいリバーブやコーラスの量を調整するだけで作られた音が、平面的でつまらなく聞こえるのは当然です。
せめて「良い勝負」にまでもっていこうとすれば、XGまたはGSの拡張規格までをフルに使って、パラメータチェンジをとことん駆使するしかありませんが、それができるには実際にシンセで音色プログラミングをし、EQや各種エフェクターを使いこなした経験が必要です。
それでも最終的には音源の出力アンプ部から音が出るのですから、その音源のカラー(DTM音源臭さ)からは、やはり逃れられないのです。
これが第二の理由です。
DTM音源は、楽曲としての完成を目指す場合に使う道具ではない・・つまり用途が違うと考えるべきなのです。
あくまで、GM1、GM2、GS、XG、といったフォーマットで作成された楽曲データの「再生確認用装置」である事を認識しておくべきでしょう。
この場合、仕事のゴールは「演奏データの完成」であって、音質を含めた「作品としての完成」ではありません。
我々シンセサイザープログラミングを生業とする者の多くが、以前は沢山のシンセサイザーを使い、マルチポートのMIDIインターフェイス、多チャンネル入出力を持つミキサー、各種エフェクト、録音機材、ケーブルのジャングルの中で仕事をしていました。
その後、殆どの機材をソフトウェアに置き換えたとしても、依然としてハードウェアだけで作業していた頃の考え方に縛られている人が多いようです。
次々とプラグインソフトや高品位サンプルデータを買い集めれば、起動可能なプラグイン数やトラック数を増やす為にコンピュータのスペックを上げ続けなくてはなりません。
「特定のアプリケーション、プラグイン、サンプル、等を用いなければ出せない音」に固執するのは、特定のハードウェアに固執するのと本質的に同じでしょう。
それが良いとか悪いとか言っているわけではありません。
がしかし、MIDIデータの長所である
・ファイルの中に演奏情報だけでなく音源等の制御信号を含められる
・音源の共通フォーマットが制定されている
・データは完全なオープンソースである
という点にもっと目を向けてほしいとは思います。
これは今後XMF(注釈1)の発展にも関わってくる事ですが、いずれにしてもデジタルテクノロジーが向かっている方向は
「全てがデータのみで機能し、最小限必要なハードは規格化され、完全な互換が保たれる」
という状態であるはずです。
私はDTM音源しか使った事の無いアマチュアの人達とは逆の事を、プロの人達に勧めたいと思います。
つまり、沢山の機材(ソフトも含む)によって作られた豊かな音を、汎用DTM音源だけを用いて可能な限り再現してみる事です。
その大変な作業(私はそういう馬鹿げた実験が大好きですが・・)の過程で、次世代のフォーマットが備えているべき機能・特性も見えて来るでしょう。
それをAMEIやJSPAなどの団体を通して開発者側にフィードバックしてほしいと思っています。
(注釈1)XMFに関して
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/09/07/18.html

*10年以上前の日記から再掲しました。

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