神鬼芸術(1)2007年12月22日 23時00分00秒


(*別の所に書いた古い日記の移植です)

私の所有する音楽ライブラリの内、最も再生回数の多いものは、あるギタリストの自主制作によるアコースティックアルバムです。
『神鬼芸術』と大仰なタイトルが付けられたこのアルバムと、ギタリスト神鬼(シンキ)氏との出会いは、今も私に強い印象を残しています。

93年の夏、石垣島旅行の最終日。
石垣市内の商店街を散策していると、ちょっと変わった雰囲気のお店を見つけました。
壁に描かれた幻想的で少し異様な絵が、のんびりした商店街の雰囲気からは浮いていますが、「弥勒そば」という店名の書かれた大きな暖簾と、開けっ放しで開放的な雰囲気が入ってみたい気をそそります。
入り口横には、最近開店したばかりである事、店主はミュージシャンで、シンキという名である事などが書かれていました。

シンキ・・沖縄出身の伝説のハードロックバンド「コンディション・グリーン」のギタリストが、たしかシンキという名だったはず・・。
とても気になったのですが、飛行機の時間が迫っていたのでその時は店に入りませんでした。
去り際に店内から、どうぞお入りくださいと声をかけてきた、素晴らしく魅力的な明るい笑顔の"おねえさん"も印象的でした。

翌年も石垣島へ。
旅行最終日、この時は時間の余裕があったので「弥勒そば」に入ってみました。
店に入ってすぐ、前年に見かけた"おねえさん”に「このお店のシンキさんという方は、もしやコンディション・グリーンの・・」と尋ねてみると、やはりそうです。
写真が載っている古い音楽雑誌やアルバムを何冊か持ってきて見せてくれました。
アルバムの写真から、どうやら最近京都でイベントをした様子なので訊いてみると、一昨年まで京都府向日市に住んでいたとの事。
私達も京都なんですよ、おやそれはそれは・・と和みながらさらに写真を見ていると、なんと知った顔があります。
「あの、この写真の人、○○君ではないですか?」
「ええ?彼を知っているんですか? お父さ~ん!この人○○君を知ってるんだって!」
と、ここで厨房から出てきたシンキ氏と初対面。

伝説のギタリストと親しく話せたのも感激でしたが、"おねえさん"が、シンキ氏の奥様であり、我々夫婦よりずっと年上で高校生の息子さんもいると判明し、これも衝撃でした。

店内で聴かせてもらったシンキ氏の自主制作アルバム『神鬼芸術』は、単なる上質な音楽というだけではなく、私のその後の生き方、考え方に少なからぬ影響を与えました。
作為の無い音楽、というものがこの世には本当にあり得るのだと、この時初めて思ったのです。
このアルバムに収められたアコースティックギターの演奏は、抽象的な表現を人一倍嫌う私でさえ『魂がそのまま音に結晶した』としか、言いようのないものでした。
(明日につづけます)

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